「真実」は絵手紙の中に・・
あるご葬儀で、葬儀スタッフがご家族に「好物は?」と聞くと、特に好き嫌いはなかった、との返事。
ところが、思い出コーナー用の展示物としてお預かりした故人様の絵手紙を確認してみると
「たい焼きの絵手紙」を発見。絵手紙には・・
見出し
絵手紙には、
年金の支給日だから
今日はたい焼きの日
私の大好物♡
と書いてありました。
それをご家族にお伝えすると
「そういえば、たい焼き好きだったよね!」
「一緒に買ったことある!」
となりました。
何気ない日常の風景すぎて、好物が何だったのか思い出せないこと、意外と多いんです。
葬儀では、自宅近くの商店街のたい焼きをご用意。
祭壇にお供えしたほか、式前にご親族には控室で召し上がっていただき、お棺にも添えてあげました。
ご家族は
「好物をお棺に入れてあげられて良かった」
「母と一緒に食べた たい焼き、最高においしかったです」
と、とても喜んでいました。
つい先日の話。
故人様の好物がわからない、という状況で、思い出コーナー用にお預かりした絵手紙のアルバムをチェックしていると、「人形焼きの絵手紙」を発見。そこには私の大好物、と書いてありました。
時間はすでに19時30分。明日は葬儀本番(一日葬)です。
ネットで検索すると、車で1時間ほどのショッピングモールで買えることが判明。
閉店は21時なので間に合いそうです。在庫を店に確認して、スタッフが買いに行きました。
いずれの場合も、
好物はわからない、で諦めていたら。
故人様の「サイン」に葬儀スタッフが気付かずにいたら。
ご家族に
故人様の好物をお棺に入れてあげた、好物をみんなで(故人様も一緒に)食べた、という思い出は作れませんでした。
大切な人の死は心を凍えさせます。
思い出は心を温めてくれます。
葬儀社はどこも同じではありません。
支払う料金が同じでも、葬儀社によって「何をしてもらえるか」は違うのです。
祭壇を飾って進行しておしまいの葬儀社もあれば
故人様と過ごす最後の時間を、温かな思い出に変えてくれる葬儀社もある。
私だったら、後者の葬儀社に葬儀をお願いしたいですね。
毎日新聞 生活の窓口 葬儀相談員 松瀬教一